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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)623号 決定

抗告人 中村フサ 外一名

主文

本件抗告を却下する。

理由

一、抗告人等の抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

二、抗告人等の抗告理由は、要するに、前記強制執行停止は担保の供与を命じないで発すべきであるのに、原審が金一五万円の担保の供与を命じたことは違法であるというのである。

しかし民事訴訟法第四一八条第一項、第二項によれば、即時抗告の申立により、即時抗告に服する裁判については法律上当然に執行停止の効力を生ずるが、具体的に執行停止の効果を得るためには同条二項により停止命令を得ることを要し(民訴法五五〇条参照)、此の停止は申立又は職権によつて為されると解すべく、その際同時に担保を供すべきことを命ずるか否かは裁判所又は裁判官の裁量に任されているのである。従つて裁量がその範囲を逸脱した場合は別として、この点を理由に不服申立をすることはできない。本件において金一五万円の担保の供与を命じたことは不当とはいえないから抗告人の主張は理由がない。

三、しかのみならず原決定は、「抗告人等において共同して金一五万円の担保を供するときは、新潟地方裁判所柏崎支部昭和三五年(ヲ)第三号換価命令申請事件につき、同支部が昭和三五年七月一〇日にした換価命令は、東京高等裁判所昭和三七年(ラ)第五六二号即時抗告申立事件につき同裁判所が決定をなすに至るまで、その強制執行を停止する」との趣旨である。

ところで東京高等裁判所昭和三七年(ラ)第五六二号事件は、昭和三八年三月一八日同裁判所第一二民事部において抗告棄却となつたことは当裁判所に明らかである。従つて原停止決定は右高等裁判所の決定により当然に失効し即ち抗告人等の不服申立はその対象を欠き利益なしというべきである。

四、以上何れの理由によつても抗告人等の抗告は理由がないから、主文のとおり決定する。

(裁判官 鈴木忠一 谷口茂栄 加藤隆司)

別紙 抗告の趣旨

一、原審が昭和三十七年十月二十二日なした原決定中申立人等(抗告人等)において共同して、金拾五万円也の担保を供するときは。

と命じた担保を供する部分を取消す。

二、原審が債権者村山石男、債務者中村フサ間の同庁昭和三五年(ヲ)第三号換価命令申請事件につき昭和三十五年七月十四日付でした換価命令は東京高等裁判所が同庁昭和三七年(ラ)第五六二号即時抗告申立事件につき決定をなすに至るまで、これが強制執行を停止する。

三、申立費用は相手方の負担とする。

旨の御裁判を求める。

抗告の理由

一、右抗告人等は、新潟地方裁判所柏崎支部が右当事者間の同庁昭和三五年(ヲ)第四号換価命令に対する執行方法異議申立事件につき昭和三十七年九月二十八日同裁判所がなした決定に対し。右抗告人等から同年十月七日御庁に対し即時抗告の申立をなしたものであつて御庁昭和三七年(ラ)第五六二号即時抗告申立事件につき現に繋続審理中であると共に。

原審が相手方(債権者)村山石男、抗告人(債務者)中村フサ間の同庁昭和三五年(ヲ)第三号換価命令に対し。右抗告人等(申請人等)からなした、原審昭和三七年(モ)第一六号強制執行停止申請事件に対して。

昭和三十七年十月二十二日同裁判所は、前記の原決定の表示の如き決定をなし。原決定中には申立人等(抗告人等)において共同して金拾五万円也の担保を供するときは。と命じた。

即ち、前記の担保を供することを前提条件として、原審が債権者村山石男、債務者中村フサ間の同庁昭和三五年(ヲ)第三号換価命令申請事件につき昭和三十五年七月十四日付でした換価命令は東京高等裁判所が同庁昭和三七年(ラ)第五六二号即時抗告申立事件につき決定をなすに至るまでこれが強制執行を停止する。と決定した。

しかし、原裁判所が申立人等(抗告人等)からなした換価命令に基く競売手続、執行停止の申立を以て。原決定中に、申立人等(抗告人等)において共同して金拾五万円也の担保を供することを前提条件として、前記のように強制執行を停止すると決定したのは不当である。原審が抗告人等(申立人等)の事実上、法律上の主張をした、その主張及び抗弁を排斥し原決定中に前記のように担保を供することを前提条件としたのは、事実審理、審究不尽、又事実の認定並びに法律の解釈を誤つたもので失当であるから、民事訴訟法第四百十条以下の規定並びに同法第四百十八条第一項第二項及び同法五百五十八条の各規定により、抗告人等は、茲に即時抗告をなす次第である。

二、その他の抗告理由は追つて抗告理由書を以て詳細に陳述し追究提出する。

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